清水 亮 准教授

博士(保健学) 管理栄養士

目次

主な研究

栄養管理はすべての医療の基本

栄養管理をおろそかにすると、いかなる治療法も効力を失うと言っても過言ではありません。栄養管理はすべての医療の基本なのです。

病院でみられる栄養問題を低栄養、過栄養に分けて、その一部を示します。

低栄養の栄養管理

信じられないかもしれませんが、 入院している方の約3割が低栄養状態といわれています。下図・左はセロファン様皮膚、下図・右はうろこ状皮膚と呼ばれ、タンパク質やすい脂肪、亜鉛等の不足で起こります。特に加齢に伴う噛むこと(咀嚼)や飲み込みこと(嚥下)の障害は、低栄養状態の原因となります。

清水 亮 研究室 図版1

また、患者様によっては、ある栄養素を増やした方がよい疾患と、減らした方がよい疾患が併存していることがあります。低栄養の方の身体・精神状 態、咀嚼・嚥下機能や病状を踏まえ、栄養療法に優先順位をつけながら経時的に検討するのも管理栄養士の仕事です。

【低栄養の栄養管理に関する論文】

高齢のNST患者における腎機能低下を考慮した栄養管理について. 愛媛労災病院医学雑誌,6.p10-12,2009

過栄養の栄養管理

過栄養が原因で起こる疾患の代表的なものとして糖尿病があります。糖尿病の栄養指導は患者様の食習慣を変化させることを目的としますが、専門的には行動変容を促すといいます。行動変容には、[前熟 考期] 行動変容を考えていない、[熟考期] 意義は理解しているが、行動変化がない、[準備期] 始めるつもりがある、ないしは患者なりの行動変化がある、[行動期] 望ましい行動を起こしてから6か月以内、[維持期] 望ましい行動を起こしてから6か月以上、といった時期があります。

管理栄養士は、食事の適正量を示すだけでなく、 これら行動変容の時期や患者様の生活環境等を考慮に入れた指導を継続的に行うことが重要です。

【過栄養の栄養管理に関する論文】

継続的な栄養指導を行うための取り組みについて. 愛媛労災病院医学雑誌,1.140-41,2004

栄養管理(Nutrition Support Team: NST)システムの開発と効果

栄養管理はすべての医療の基本ですが、基本すぎるためにおろそかにされがちでした。最近では多くの総合病院で、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などから構成される栄養サポートチーム(NST)が作られ、患者様の栄養改善を図っています。

管理栄養士はNSTの中で中心的な役割を担います。栄養管理の知識だけでなく、NST活動の効率化やメンバー間の協力体制強化のための発想力や人間性を養うことも大切です。

清水 亮 研究室 図版2

【NST運営に関係した論文】

栄養管理(Nutrition Support Team: NST)システムの開発と効果. 愛媛労災病院医学雑誌,3: 19-22,2006.

高齢の方において栄養状態が崩れやすい理由

高齢で栄養状態のよくない方は、免疫機能の低下から肺炎や感染症を起こしやすく、また筋力低下による転倒で骨折しやすくなることから、生活の質(QOL)が低下しやすくなります(図1) 。さらに、基礎 代謝や咀嚼・嚥下機能の低下に加えて、筋量の減少による活動性の低下が食欲不振につながり、更なる栄養状態の悪化(低栄養サイクル)を招きます(図1)。高齢者では低栄養の危険性を察知し、できるだけ早く対処することが必要です。

入院している方の栄養問題は、入院中の栄養管理が重要であることは言うまでもありませんが、退院後にどのように栄養に気を付ければよいかをサポートすることも重要です。そこで、本研究室では、特に咀嚼・嚥下機能が低下している患者様について、病院を退院する際の栄養食事指導の実施状況について調査し、実施のために必要なことについて検討、報告しました。

清水 亮 研究室 図版3

【論文】

摂食嚥下障害者の在宅移行時における管理栄養士又は栄養士による食事指導に関する調査.栄養学雑誌74(1)4-12.2016.2

高齢の方が糖尿病になりやすい理由

また、高齢の方は、糖尿病にもなりやすくなります。まず、体につく脂肪の割合(体脂肪率)が、高くなる傾向があります(図4)。すると、血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなります(図2) 。一方で、加齢により、インスリン分泌も低下します(図2) 。これらが合わさることで、血糖が高めになり、糖尿病へつながっていきます(図2)。

糖尿病の方の食事療法は、食事の量を抑え気味にするというイメージはないでしょうか。確かに中年までの方であれば、エネルギーを制限して、適切な体重に減量することが重視されますが、高齢の方の場合には、漫然と食事量を減らしていると、前述した低栄養につながる可能性があります(図2)。

清水 亮 研究室 図版4

これに関連し、私達は、糖尿病の方の1年間の治療において、体につく筋肉の割合を維持しながら治療した人の方が、糖尿病に関する検査値が良くなったことを報告しました(図3)。このことは、高齢の糖尿病の方では、栄養状態に注意しながら食事・運動療法をすることで、糖尿病の改善につながる可能性を示しています。

清水 亮 研究室 図版5

【論文】

Skeletal Muscle Mass Ratio as an Index for Sarcopenia in Patients With Type 2 Diabetes. Topics in Clinical Nutrition . 34.209-217.2019.7

プロフィール

学歴・経歴

岡山県立大学大学院栄養学専攻修了後、愛媛労災病院に8年余勤務。2010年4月より着任。
平成31年度に弘前大学大学院にて博士(保健学)取得。

所属学会等

  • 日本栄養改善学会
  • 日本静脈経腸栄養学会
  • 日本病態栄養学会
  • 日本肥満学会
  • 日本衛生学会
  • 日本ヒューマンケア科学学会
  • 栄養アセスメント研究会

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清水 亮(Ryo Shimizu)

高校生へのメッセージ

栄養の『栄』の旧字は『榮』。『榮』は、木に沢山の花が咲き、輝かしい様子を由来とする説があります。皆さんも『榮』のように、沢山の花を付け、輝く学生生活を本学で共に過ごしませんか。

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